カヤバ珈琲
谷中町の入り口に建つ、カヤバ珈琲店。
町のシンボルとして
多くの人に親しまれてきた「喫茶店」です。
2009年、
当時の面影、昭和からのメニューを残しつつ、
新たなデザインを加え、再出発しました。
まちとカヤバ珈琲
カヤバ珈琲店は、江戸期には寛永寺上野山内から谷中に入る場所、 谷中で最初に町地となった旧町名、谷中町の角に建っています。 一、二階とも二方に出桁造の軒をまわす姿が特徴的な町家型のこの建物は、 東から谷中に入る際のランドマークとなっており、平成11年台東区景観コンクールまちかど賞を受賞しています。 大正5年(推定)の建設以降、ミルクホール、かき氷・あんみつ店、などを経て昭和13年に「カヤバ珈琲店」となり、 谷中のシンボルとして、憩いの場、芸出談義の場として、地域の方や東京芸大関係者、谷中散策客など、 幅広い層に長年親しまれてきました。 平成18年に一旦閉店となりましたが、この喫茶店に愛着を持つ地域内外の人の支援を得て、平成20年、 NPO法人たいとう歴史都市研究会が借り受け、あたらしい運営者により「カヤバ珈琲」が復活しました。
建物の特徴
建物母屋は、間口二間、奥行五間の寄棟造総2階建、奥に平屋の付属屋があります。 建物の角には八寸角、欅の太い通し柱を用い、大きな梁(人見梁)を渡しています。 かつては摺り揚げの格子戸で開口部を広くとった造りでした。
昭和13年、カヤバ珈琲店になってからは、入り口を洋風の扉として、照明入りの看板、窓、花壇などを配して、 出桁造りの町家の外観を活かしつつ、昭和期の喫茶店らしい風情を保っています。 平成20年の改修では、建築家永山祐子氏によって、大正町家の外観や柱梁、昭和喫茶の思い出ある看板、 椅子、カウンターの煉瓦壁、食器等を残し、昔の雰囲気を現代的な文脈で読み替えた空間づくりがおこなわれています。
◆店舗改修設計
永山祐子建築設計
◆建物調査・保存監修
東京芸術大学大学院文化財保存学
保存修復建造物研究室
◆保存改修計画・建物管理・企画
NPO法人たいとう歴史都市研究会、
SCAI THE BATH HOUSE
◆店舗運営
現代美術株式会社
活用概要
1F カヤバ珈琲店
味のある既存の家具やカウンターなどが、鏡面仕上げの天井や床面で増幅されるような内装デザイン。モダンでありながら落ち着きのある店内です。
1F NPO事務所
店舗奥の平屋部分は、当会の事務所として活用中。玄関タタキ部分には大きな黒板壁面があり、芸工展などのイベント時を中心に、展示空間として解放されます。
2F カヤバ珈琲店
既存の意匠をほぼ踏襲したデザイン。イベントなどにも活用される座敷空間は、アクリルで穿たれた床面で、一階と意識的に繋がります。
メニューなど
珈琲とココアの「ルシアン」、暖かい卵焼きを挟んだ「たまごサンド」など、 往時の味を忠実に再現した名物メニューに加えて、谷中のコシヅカハムを使った「厚切りハムサンド」や、 「谷中ジンジャー」などの新メニューを加えて営業中。詳しくは店舗までお問い合わせください。